不動産会社の中には、勝てば官軍という考えを持つ人が多い。要するに、売れた物件が正しいという考え方です。確かに、売れたという事実だけを見ればその通りなのですが、なぜ売れたのか?ということがわかっていなければそれは単なるラッキー。再現性がなければ、いずれ大失敗を経験することになります。
だから、売れたかどうかより、なぜ売れたのか?を知ることが大切。もっと言えば、お客様が満足して売れたのか、他よりマシだったから売れたのかを知ることが大切です。
以前、あるヴィンテージマンションを案内した時のことです。そのお客様は、音楽関係のアーティスト。代官山にある有名なヴィンテージマンションが見たいということで案内しました。場所、建物の雰囲気ともに大満足の物件でしたが、室内が全くダメ。ひと目で顔が曇りました。
その理由は、インテリアが新築マンションのようになっていたから。売主としては、古いマンションを新しくリノベーションしたつもりなのでしょうが、リノベーションの内容が大間違い。ヴィンテージマンションを買う人の気持ちがわかっていません。築40年以上のヴィンテージマンションを選ぶ人には、それなりのこだわりがあります。それを新築マンションと同じようにリノベーションしても彼らのこだわりは満足できません。
このお客様が求めていたのは、味のあるマンション。今時の新しいマンションにない本物の雰囲気です。新築マンションを買おうと思えば買えるお金があるにもかかわらず、あえて築40年以上のマンションを選ぶのですから、フツーの人とは感性が違います。それを理解していない。お客様の気持ちがわかっていません。
もちろん、中にはそんなリノベーションでも購入する人はいるでしょう。実際、そのマンションも値下げを繰り返した後、売れていましたから購入する人もいたのでしょう。しかし、購入者の気持ちをもう少し理解していれば、もっと早くく、もっと高く売れたのは間違いありません。
もしこの売主が、売れたか売れなかったかだけでビジネスの成否を判断しているとしたらまた同じ過ちを繰り返すことでしょう。今回売れなかったのは価格のせい、もっと安く仕入れるべきだったと思っているのかもしれません。いや、やっぱりヴィンテージマンションは築年数がネックになると思っているかもしれません。
どちらにしても売れたか売れなかったかだけで判断しては改善策は見えてきません。大切なのは、なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのかという理由です。それを知ることが、経験を積むことであり会社の知的財産を増やすことです。
そのためには、お客様の声に耳を傾けること。実際の生の声を聞くことです。聞きたくないことに耳を傾ける習慣を身につけましょう。断り文句の中に成功のヒントが隠れていることを理解しましょう。それを実行するだけで他社より頭一つも二つも抜け出すことができます。お試しください。
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