以前読んだ本の中に、「駿足」を生み出した開発チームの本があります。
「駿足」とは、子供の2人に1人が履くという奇跡のシューズ。
約1,000万人の子ども靴市場で年間売上600万足超。2003年の発売以来、急速に売上を伸ばし、累計売上は4,000万足を突破している圧倒的シェアNo. 1の子ども靴です。
そんな奇跡のシューズが誕生するまでの様々な葛藤と企業努力を綴った本なのですが、建売業界と相通じるものがあるなぁというのが正直な感想です。
駿足を作ったのはアキレス株式会社という会社。創業69年の老舗企業です。年間150万足売れれば大ヒット、その数字を超えるのは至難の業、というのが子ども靴市場における業界の共通認識。それを発売からわずか2年で達成したというのですから奇跡のシューズというのも納得できます。
老舗企業だからこそできたのだろうと考えがちですが、実は老舗企業だからこそ大変だったというのがこの本を読んでよくわかります。なぜなら、老舗企業ゆえに保守性が高く、新しいことをはじめる、発想を大胆に転換させるという事が難しいからです。
実際、駿足が生み出される直前の時期までは時代の流れに乗り遅れ、逆境に苦しんでいました。少子化の波が押し寄せ、市場全体が縮小してきたからです。つくれば売れる時代は終わり、少ないパイを奪い合う競争時代へと突入していたからです。
そのため、ライバル各社は価格競争力を高めるためこぞって中国へ生産拠点を移して行ったのですが、ここでアキレスは大きく遅れをとります。
それが自社技術へのこだわりです。老舗企業であるがゆえのこだわり。それが中国進出へ大きく出遅れることになります。気がつけば業界トップから4番手へ後退。ここでようやく改革に火が付きます。
まるで地域ナンバーワンだった建売業者がパワービルダーにその座を奪われていく様と同じです。アキレスの場合は、ここから大きく変化していきます。変化のポイントは、つくれば売れる時代は終わったと各自が認識したこと。
「プロダクトアウト」から脱却し、求められるものをつくる「マーケットイン」の発想に転換したことです。そのために、実際に子どもの履く靴を写真で撮り続け、情報をデータ化。トレンドの変化を敏感にキャッチできるようにしました。
その上で、開発サイドと営業サイドの情報を橋渡しするポジションを設置。情報を共有して優れた商品を開発する土壌を作ったのです。そして、気がつけば絶対に不可能と言われた数字を達成。縮小する子ども靴市場に新たな市場を形成してトップ企業に再度登りつめたのです。
縮小する市場、保守的な業界、価格競争等々抱える問題はまるで建売業界そのもの。あなたもたまには異業種の成功物語を読んでみてはいかがですか?参考になるヒントが溢れていますよ。
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