「お客様の声を聞きなさい」とよく言われます。実際、私もクライアントさんには口が酸っぱくなるほどこのことを言います。理由は簡単。「お客様が何を求めているか?」がわかれば、売れる商品を作るのは簡単だからです。
これをマーケティングでは、マーケットインといい、お客様のニーズを優先し、顧客視点で商品の企画・開発を行い、提供していくことです。
それに対するものに、プロダクトアウトがあります。プロダクトアウトとは、企業が商品開発や生産を行う上で、作り手の理論を優先させる方法のことです。「作り手がいいと思うものを作る」「作ったものを売る」という考え方で日本では長い間この考え方が取られてきました。
しかし、90年代前半、顧客の視点やニーズを重視しようとする発想が登場し、それらを起点にしたマーケットインのビジネスが多数考え出されました。それはそれで間違いではないのですが、一つだけ注意が必要です。
なぜなら、お客様が望むものが常に売れるものではない、からです。こんな商品が欲しい、とお客様が言ったとしても、その商品を買うか買わないかは、別の問題、ということです。
なんとも矛盾した話ですが、実際、お客様の言葉にダマされることはよくあります。有名なところではマクドナルド。あのマクドナルドでさえも、お客様の言葉を真に受けて大きな失敗をしているのです。それが、マクドナルドの健康を意識したメニューでした。
以前、マクドナルドでは野菜がたっぷり取れる『ベジタブルチキンバーガー』、朝メニューでは『ベジタブルチキンマフィン』、また子供向けには3種類の野菜を練り込んだチキンパティを使った『モグモグマック』を投入し、健康志向の顧客の取り込もうとしたのですが、これが大失敗。多額の投資にもかかわらず成果を上げることができませんでした。
当時の社長は、株主総会の質疑の中で、「消費者はマクドナルドに、そういうものを求めていないのではないか?」と回答しています。
つまり、お客様はマクドナルドの商品は健康的ではない、とマイナスのポイントを指摘しておきながら、健康的な商品を提供すると、これはマクドナルドらしくない、と否定しているということ。矛盾した行動をとっているということです。
建売住宅もしかり。お客様の声に耳を傾けるのはとても大事。しかし、鵜呑みにするのは禁物ということです。これが商売の難しいところ。お客様の声の裏側にある本音を見極めることが大切だということです。ご注意ください。
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