「時代が変わる」とよく建売業者さんに話をするのですが、今いちピンと来ない人が多い。ピンと来ない理由は、住宅政策の歴史を知らないことが原因。住宅政策の歴史と客観的なデータを知ると、嫌でもこれからの住宅業界の未来が見えてきます。
では、簡単に説明しましょう。
1998年以降の住宅の着工戸数(建て替えも含む)は毎年100万~120万戸。2013年度は消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり98万戸が着工されました。全住宅取引の8割以上は新築で、中古住宅の比率は10%半ば。欧米で7~9割を中古が占めるのとは対照的です。
なぜ日本は新築比率が高いのか、これは第二次世界大戦後の住宅政策の影響によるものです。戦後の日本は市街地が焼け野原になった上、外地からの復員者も増えて住宅が圧倒的に不足していました。そのため政府はまずは住宅を建設することを優先したのです。
そして、1950年代には高度成長による建設ラッシュが起き、都市部を中心に人口が急増。政府は持ち家制度を奨励し、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)が低利融資を行い住宅ローン減税のしくみも作りました。とにかく、量の確保が最優先で、質の良い建材を用いて、手入れをしながら長く使うという戦前の住宅建設の概念は後回しになったのです。
地価は右肩上がりに上昇し、建物に価値はなくても土地の価値は残るため、早く住宅を取得することが有利とされました。そのため、住宅総数は60年代後半にすでに総世帯数を突破。今の空き家問題の基礎はこの頃にすでに出来上がっていたのです。
やがてバブルが崩壊し、不動産価格は必ず値上がりするという「土地神話」も崩壊しました。しかし、政府は一貫して住宅建設の後押しを続けたのです。なぜなら、住宅はてっとり早い公共投資だからです。道路やダムなどのインフラ整備には膨大な時間やお金がかかりますが住宅は少しだけ制限を緩和すれば済みます。その上、住宅着工は建築関係の仕事を生み、家電や家具など消費も刺激するため効率の良い景気対策にもなるからです。
問題は、少子高齢化を背景に日本の人口が減少局面を迎えていること。2013年の日本の人口は約1億2000万人。しかし、2060年には総人口が9000万人を割り込むといわれています。これは終戦直後の日本の人口とほぼ同じ規模。有り余った空き家と、戦後と同じ規模の人口。これがこれから建売業界が直面する未来です。
当然、今までと同じやり方では生き残れるはずはありません。人口が減少しても、家が有り余っていても売れ続ける建売住宅をつくる必要があります。国は見捨てるわけないとうそぶく人もいます。果たして本当に大丈夫でしょうか?政府がこれからも住宅業界を本気で後押ししてくれるでしょうか?そろそろ真剣に考える時期ではありませんか?
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