VOSSというミネラルウォーターを知っていますか?ノルウェーのミネラルウォーターで375mlで450円、800mlで800円という超高級ミネラルウォーターです。量販店のスーパーなら2ℓのペットボトルが80〜90円で売られている時代ですからこの価格がいかに高いかわかります。
さぞかし、おいしい水なのだろうと思いますが、実は水のおいしさを正確に評価できる人はほとんどいません。実際、ワインの専門家にVOSSの水をグラスに入れ、水道水とどちらがおいしいかテイスティングしてもらっても、結果はバラバラ。水道水の方がおいしいと評価する専門家も多いわけですから、特別な味があるわけではありません。
そんなVOSSの水ですが、売れていないわけではありません。爆発的に売れているということではありませんが、それなりに売れています。一本あたりの利益率を考えるとむしろ莫大な利益を上げているといってもいいでしょう。
では、なぜ特別おいしいわけではない水がこんなに高く売れるのでしょうか?
それがマーケティングの力です。VOSSが取ったマーケティング方法は主に3つ。ひとつは、パッケージを高級なものにしたこと。ありふれたペットボトルではなくガラスを用いた化粧水のようなボトルにして、高級なテーブルウェアに変えました。2つ目が、有名人が集う場所で提供したこと。マドンナなどの海外セレブが飲むことでそのイメージを高めました。そして3つ目が、販売する場所をバーや高級レストランを利用したことです。これらによって水道水と区別がつかないような水を他の水の5〜10倍近い価格で売ることに成功したのです。
まあ、これをそのまま建売住宅に適用して数倍の価格で売ろうという話ではありませんが、参考にできる部分はあります。それは、販売する場所です。彼らは、当初販売する場所をバーや高級レストランにしました。その理由は、ブランド力を上げることもありますが、VOSSの水の価格を高く感じさせないようにする狙いもあったのです。
VOSSの水は他の水と比べると明らかに高く感じます。しかし、水ではなく高級なワインやシャンパン、お酒と比較すると高くは感じません。むしろ、安く感じるほどです。高級ワインの代わりに高級な水を飲む。高級なシャンパンの代わりに高級な水を飲む。安い水ではないからこそ、飲む方にも抵抗がありません。この原理を利用したのです。
この比較する対象を替えるという方法は新築分譲住宅の販売でも利用できます。
例えば、ターゲットとする客層を同業他社が狙っている客層ではなく注文住宅業者が狙っている客層に替える。他の新築分譲業者が狙っている客層であれば高いと思われる物件も、注文住宅業者が狙っている客層なら安く感じるはずです。そこを訴求していくのです。
もちろん、注文住宅と分譲住宅ではお客様の求めるもの、クオリティが違うので、それは商品企画やサービスで対応しなければなりません。VOSSの場合も、通常のペットボトルではないおしゃれなガラス容器に変更しました。しかし、そこを工夫することで大きな利益のとれる客層を獲得することに成功したのです。
大切なことは、比較する対象を替えること。土俵を替えることです。これがうまくできれば価格の壁は突破できます。一考の価値、ありますよ。
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