先日、TVを見ていたらアート引越しセンターのCMが流れていました。アート引越しセンターといえば、私たちコンサルタントにとっては話題の宝庫。様々な事例を提供してくれる会社のひとつです。
アート引越しセンターは、もともとは運送業社。石油ショックで仕事がなくなった時、当座を凌ぐために考え付いたのが引越し業だといいます。「荷造りご無用」「エコ楽ボックス」「レディースパック」など、業界初の斬新なサービスはほとんどがアート引越しセンターが考え出したもの。
作業員には名札を着用させ、新居に上がる際には新しい靴下に履き替えさせたり引越し費用の見積もりに行った社員が、袋にピカピカの十円玉を2枚入れ、電話のそばに黙って置いてくるようにしたのも社長のアイデア。1枚は電話をかけてくれたことのへの感謝、もう1枚は契約の電話をかけてほしいとの思いを込めて。
そんな細やかな気配りにいたるまで、徹底して顧客満足を追求。それをマネをする同業者が次々と現れ、いまや業界全体のスタンダードをつくりあげている会社です。
なかでも、社名のつけ方は都市伝説として有名。引越事業を始めるに当たって社名を決める際、多くの人は運送業者を探す時に電話帳を使うため、できるだけ最初の方で見つけやすい位置に乗る社名をと考えたといいます。
電話帳では五十音順で「あ」が最初に来て、次に「ー」が来るということで名前を考えた結果、「アート引越しセンター」に決めたといいます。
さらに各営業所の電話番号は覚えやすいように「0123」で統一。「あなたの街の0123」というおなじみのCMソングは、夫婦で知恵をしぼって作り上げたもの。
そして、社運をかけ、借金までしてCMを放映。これが起爆剤となり、引越サービス業としてアートの名前が、全国に認知されていくようになったといいます。
そして、もうひとつ見逃してはならない伝説は、雨の日に家財道具が濡れるのを見た社長が引越し用のトラックを幌付きに変えたという話。それまでの引越しは運送業社の片手間がほとんど。引越し用のトラックには幌が付いていなかったといいます。そのため、雨が降ると慌てて荷台に置いてある汚い布を掛けていました。
それを見た社長がこれでは家財道具が可哀想と幌付きのトラックにすることを決断し業績を伸ばしたという話ですTVCMでもそんな様子が写しだされていましたが、これには別の裏話があります。
確かに、幌付きトラックは社長のアイデア。幌付きなら雨に濡れることもなく、安心して家財道具が運べるのでお客様に喜ばれるだろうとはじめました。実際、幌付きのトラックにしたところ売上は伸びたといいます。
やはり自分の考えは正しかったと思っていたのですが、ある時それを確かめようとお客様に幌付きトラックを選んだ理由を聞いたところ、予想外の答えが返ってきたといいます。
それは、幌付きだと家財道具が丸見えにならなくて恥ずかしくない、という言葉でした。お客様は、雨に濡れる心配がないから幌付きのトラックを選んでいたのではなく、引越しの際、近所の人に家財道具が見えないから幌付きのトラックを選んでいたということ。
後々わかったことですが、幌付きトラックを選んだお客様のほとんどが近所の人に家財道具が丸見えにならないから恥ずかしくないという理由だったといいます。
実は、これは私たちに大きな教訓を与えてくれます。それは、自分たちが思っているメリットとお客様が感じているメリットは違うことがあるということです。
アイデアを出して業績を伸ばす。それ自体はとても大切なことです。しかし、業績が伸びた本当の理由は何か?お客様が自社を選んでくれた本当の理由は何か?を知ることはもっと大切。なぜなら、そこに私たちが想像もしないような成功のヒントが隠れているからです。
あなたは、お客様があなたの物件を選んだ本当の理由を知っていますか?ひとりよがりにならないために、できる限りお客様の生の声を聞きましょう。意外な答えが隠れていますよ。
この記事へのコメントはありません。