以前、相談を受けた新築分譲会社さんの話。
自信満々で建てたある現場。完成すればすぐに売れるだろうと思っていたのに、なかなか売れない。3棟のうち1棟はなんとか売れたのですが残りの2棟がまったく売れない。完成からすでに3ヶ月。最近では業者からの問い合わせもめっきり少なくなった・・・そんな時にご相談がありました。
早速、現地を確認。物件自体は決して悪いわけではありません。むしろ、かなり凝ったつくり。良くも悪くも、社長の好みが随所に反映された建物でした。但し、問題は価格。近隣の物件よりかなり高い。本人は価格が高いのは承知しているとのこと。しかし、それ以上に自社の物件には自信があるといいます。その根拠は、と聞くと「一生懸命つくったから」というわけのわからないもの。
そこでこんな質問をしてみました。
「他社と比べてどの部分が違いますか?」すると、予想通り答えが出てこない。売れない現場をかかえた建売業者さんによくあることですが自社の物件の強みがわかっていない業者さんがたくさんいます。この物件の社長さんもそのひとり。具体的にどの部分が他社より優れているのか説明できない。
そこで次の質問。
「競合する物件は見ましたか?」と聞くと、
「販売図面では見てる」という返事。
「現地は?完成物件は内覧しましたか?」と聞くと、
「いや、そこまでは・・・」
要するに、ライバル物件については何も「生」の情報を知らないということ。
通常なら、現地へ行って、完成物件なら室内もチェックするのが当たり前。しかし、そこまではしていないといいます。レインズやアットホームの図面を見て競合の現場を見たような気になっているだけです。そんな状態で自社の物件には自信があると言っている。これを驕りと言わずしてなにを驕りというのでしょう。
早速、社長には競合する物件をすべて見に行ってもらいました。数日後、再びお会いすると開口一番、「売れない理由がわかりました」という社長の言葉がでてきました。そうなんです。売れない理由はライバル物件を見れば誰でもわかるんです。できることなら最初からライバル物件を研究して用地の仕入れをすれば建物を建てる前に対策が練れます。そうすれば完成後に苦しむ必要はありません。
しかし、それが案外できない。いきなり嫌な現実を目にするより淡い期待を抱いていた方が楽だからでしょう。でも、最終的に困るのはあなたです。自分が仕入れるときはもちろん社員にも徹底的にライバルをリサーチするよう目を光らせましょう。
敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。
基本中のキホンです。
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