経営者からよく聞かれる質問に、社員はどうしたら変えることができますか?という質問があります。この質問の背景には、思うように社員が育たない、社員がなかなか言うことを聞いてくれない、と言う悩みがあるのですが、
人は感情が大きく動き、変わらなければならない理由が明確になった時、変わります。つまり、2つの条件を満たすことができると人は変わると言うことです。
人間の脳の8割は大脳が占めています。大脳には大脳辺縁系を中心とした感情や記憶を司る部分と、大脳新皮質を中心とした言葉や計算、論理を司る部分とがあります。
前者を感情の脳、後者を論理の脳と呼びますが、文字どおり、感情の脳は感情に反応し、論理の脳は理由に反応します。だから、人間を動かす上では感情と理由の2つが重要となります。
経営の神様と言われた松下幸之助氏は、部下の感情の脳を刺激し、変化と成長をもたらす達人でした。叱る時は烈火の如く、鬼の形相で叱る。そして、叱った後は、鬼の形相から一転、仏の顔に変わり、「君の可能性はこんなもんじゃない。これからも僕は君に期待している」というメッセージを伝える。これが松下幸之助氏の叱り方でした。
きつく叱られて落ち込んだ後に、仏の顔で「君の可能性はこんなもんじゃない。これからも期待している」と言われた部下は、何としても期待に応えようと奮起したそうです。そうやって部下の変化と成長をもたらし、組織を大きくしていきました。
このように感情が動くと、人は行動を変化させる強い動機を覚えます。ただ、大きく感情が動いたことによって自分を変化させようという動機を覚えても、日が経つにつれてその動機は弱くなっていきます。そこで、その動機を維持していくために必要なのが「なぜ自分は変化しなければならないのか」という理由です。
多くの経営者は、部下を叱ることで感情の変化を起こし、部下を変えようとします。しかし、それでは一瞬しか変化は起こりません。喉元過ぎれば熱さを忘れるで、時間が経てば元に戻ってしまいます。
それを食い止める唯一の方法は、部下に変わらなければならない理由、なぜ変化しなければならないのか、変化することでどんなメリットがあるのかを、腑に落ちるまで説明することが重要になるのです。
怒ったり、叱ったりだけなら誰でもできます。大切なことは、変わる理由を腑に落ちるまで説明すること。諦めないで根気よく伝えること。それができた時、社員もあなたも大きく変わります。お試しください。
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