「風姿花伝」という書物があります。
世阿弥が残した能の理論書ですが、私たちのビジネスにも大いに参考になることが書かれています。
そもそも世阿弥は今でいえば「観世座」という劇団のオーナー兼プロデューサー。劇団の存続のためにはどうしたらいいかを考え抜きました。
それは役者の修行方法から始まり、いかにライバル劇団に勝ち、観客の興味をひくにはどうすべきかなど、後継者に託す具体的なアドバイスを記したものが、彼の伝書です。いわば、芸術のための芸術論というよりは、生存競争の厳しい芸能社会を勝ち抜くための戦術書ともいえるものです。
世阿弥の時代には、「立合」という形式で、能の競い合いが行われました。
立合とは、何人かの役者が同じ日の同じ舞台で、能を上演し、その勝負を競うことです。この勝負に負ければ、評価は下がり、パトロンにも逃げられてしまいます。
立合いは、自身の芸の今後を賭けた大事な勝負の場でした。しかし、勝負の時には、勢いの波があります。世阿弥は、こっちに勢いがあると思える時を「男時」(おどき)、相手に勢いがついてしまっていると思える時を「女時」(めどき)と呼んでいます。
世阿弥は、「ライバルの勢いが強くて押されているな、と思う時には、小さな勝負ではあまり力をいれず、そんなところでは負けても気にすることなく、大きな勝負に備えよ」と言っています。
女時の時に、いたずらに勝ちにいっても決して勝つことはできない。そんな時は、むしろ「男時」がくるのを待ち、そこで勝ちにいけというのです。世阿弥は、この「男時・女時」の時流は、避けることのできない宿命と捉えていました。
「絶対売れる!」と踏んだ建売住宅が苦戦することがあります。一生懸命努力しているのになかなか売れない時があります。そうなると、ついつい弱気になります。焦って値下げをしたくなるかもしれません。
しかし、女時の時に、いたずらに値下げして売ろうとしても傷口を広げるだけ。そんな時は、男時が来るまで待つのも一手です。
世阿弥曰く、
「時の間にも、男時・女時とてあるべし」
「いかにすれども、能によき時あれば、必ずまた、悪きことあり。これ力なき因果なり」
そして「信あらば徳あるべし」。
信じていれば、必ずいいことがあると説いています。
あなたが本当にいい物件をつくっている自覚があれば必ず売れます。
やるべきことを淡々と続けることです。
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