マーケティングでよく言われることのひとつに、ライバルは同業社だけではない、というのがあります。ついつい、私たちは同じ建売業社をライバルだと思ってしまいますが、実はこれは大きな間違い。消費者から見れば、住まいは新築一戸建てだけではありません。新築マンションも中古住宅もリノベーション物件も賃貸も、住める場所を提供している会社は全てがライバル。だから彼らの動向をチェックしておくことはとても重要です。
とりわけ、これからの建売業者の最大のライバルになりそうなのが、リノベーション業者さん。今のところ中古マンションを主流に活躍している会社が多いようですが、これらの会社が中古住宅、果ては、新築一戸建てに進出してくるとかなり厄介なことになりそうです。
なぜ、厄介なのか?
それは、彼らの発想が柔軟だからです。
多くの建売業者さんは、過去の成功体験にとらわれ過ぎています。そのため、部屋数は何部屋必要とか、こんな機能が必要だとか、という従来の枠組みの中で家を考えようとします。その結果、どこも同じような家ばかり。言葉は悪いですが、「食って寝るだけの家」を無意識のうちに作っているのです。
もちろん、それが望まれた時代もありました。しかし、今はそれが望まれる時代ではありません。むしろ、その弊害が出てきた時代。戦後に浸透した※LDKという発想で核家族化が進み、家族がバラバラになってしまった弊害に悩まされている時代です。それを考え直そうとするのがこれからの時代です。
消費者の生活は豊かになりました。昔のように「食って寝ること」がありがたかった時代ではありません。それだけなら賃貸でも十分ですし、マンションだって、中古住宅だってできます。家の機能は、すでに十分満たされているのです。満たされていないのは、その家でどんな生活ができるのか?どんな体験ができるのか?という部分です。
先日、あるリノベーション業者のサイトを見ていたら、様々な併用住宅の事例が出ていました。
小ビル×賃貸住宅=稼ぎだす家
戸建住宅×アトリエ=究極の職住近接
戸建住宅×店舗=まちにひらく家
住まいにその人の働き方やライフスタイルを掛け合わせた家をお洒落に提案していました。もちろん、このリノベーション業者さんのアイデアをそのまま建売住宅に応用して成功するかどうかはわかりません。しかし、売り建てならそんなアイデアも簡単に発信できます。そして、そんなアイデアに賛同する人が多くなれば、それで一つのニッチ市場をつくることも可能です。
これからの商品企画で大切なことは、その家でどんな生活ができるのか、を明確にすることです。これからのお客様が求めているのは、機能や性能などの「モノ」ではありません。その家を通じてどんな体験ができるのかという「コト」です。そこのところくれぐれもお忘れなく。
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