以前、コンサルティングをしたある地方の新築分譲業者さんの話。
社員が不動産業者にのせられてとんでもない土地を仕入れてしまったそうです。
駅からは、歩けない。日当たりは、悪い。価格は、高い。典型的な三重苦のような土地でした。
競合を見るともっと条件のいい土地で2割は安い。どんな事業計画を立てたらこの土地を仕入れられるのか不思議な土地。これで土地の仕入れができるなら営業マンなんていらない、そんな土地でした。そうはいってもすでに仕入れてしまった土地。放っておいても売れるとは思えません。焦った社長が、知り合いを通じて私に相談にいらしたのでした。
社長としては、土地の取得価格が高いため建物のグレードを落として販売価格を少しでも安くしたいとのこと。あとは、売り方を工夫して売り切りたいという考えのようでした。
さて、あなたならどうしますか?
私がアドバイスしたのは、その逆。建物をグレードアップして売りましょうという提案です。
そもそも土地自体は魅力のない土地。価格が高い上に、利便性も、日当たりも悪い。競合物件と比べるとセールスポイントのない土地です。この物件に安い建物を建てるとどうなるか?そう、もっと魅力のない物件になります。そうなったら残された道は、価格を下げるだけ。価格以外に競合物件に勝つ方法はありません。
もちろん、ただでさえ高い土地に他社よりコストを掛けた建物を建てるのですからリスクはあります。
しかし、売れる可能性は高まります。あなたも見たことはないでしょうか?場所は悪いけど、いい家が建っている現場を。
人は、何か突出した魅力を感じれば欠点を見逃す習性があります。それを利用するのです。
場所は悪いけど・・・日当たりは悪いけど・・・こんな建物なら住んでみたい。そう納得させられるような建物ならデメリットを挽回することも可能です。
で、どうなったか?
最終的には当初の社長の考え通り建物のグレードを落とした安い家を建てることになりました。グレードの高い建物を建てるリスクが取れないというのが理由です。土地を仕入れて建物が完成するまでに半年。完成してから1年。合計1年半ほど、販売していましたがそれでも売れません。最終的には、売るのを諦め社有物件として貸家にしています。
最近のお客様は二極化しています。
どんなに安くても気に入らなければ買わない。逆に、気に入りさえすれば予算をオーバーしてでも買う。このどちらか。それを理解しないでテキトーな物件をつくると痛い目に遭います。条件の悪い土地ならなおさら。よほど工夫して魅力的な建物にしないとお客様は買ってくれません。
土地の仕入れが厳しくなった今、売れ行きを左右するのは建物。
これからは建物の時代、といっても過言ではないかもしれません。
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