ある地方に伝説の工務店があります。今から16年前に社長一人ではじめた工務店。
ローコスト住宅を引っさげてあっという間に地域一番店に。その期間は、わずか2、3年の出来事だったと思います。
彼が優れていたのはマーケティングでした。チラシや現地販売会など、小さな工務店が大手に勝つ手法をマーケティングで磨き上げたのです。それまでの工務店の常識を打ち破る戦略は、まさに衝撃的。
地域の業者と多くの軋轢を生みましたが、勝てば官軍。今では、工務店業界のスタンダードとしてその手法は日本全国に広まっています。彼の小さな工務店は事務を除いた社員は5人程度。それで、年間50棟を販売するというのですから、ハンパではありません。
そんな才能を持った彼ですから、8年ほどで社長業を社員に譲りました。新しいビジネスをはじめたからです。もちろん、会社を任せた社長も生え抜きの社員。人柄もよく真面目な人でしたから彼が抜けた後も、年間50棟という売り上げはキープし続けました。
それだけ、彼のつくり上げたマーケティングシステムが完璧だったということでしょう。傍目には順調そのものに見えていたのです。そんな彼の会社が創業16年目にして初めて赤字に転落することになりました。
やり方は今までと一緒。
働いている従業員も一緒。
それなのに売上が赤字になってしまったのです。
理由は、お客が来ないこと。
集客できないことです。
あれだけ集客には定評のあった彼の会社に閑古鳥が鳴きはじめたのです。チラシを撒いても反響がない。現地見学会をやっても来場がない。行列ができる工務店として一世を風靡した会社が見るも無残な姿に成り下がってしまったのです。
そこで急遽、社長交代。
彼が陣頭指揮を取ることになりました。
結局、2ヶ月程で経営の立て直しに成功するのですが、その間の彼は浦島太郎状態。わずか8年でここまで市況が変わるのか、と、唖然としたと言います。
要するに、わずか8年で一世を風靡したやり方は賞味期限切れとなったということ。どんなに優れたノウハウでも市況に応じて改良を重ねないと、あっという間に陳腐化するということです。
考えてみれば当たり前です。今は超情報化社会。儲かる情報はあっという間に世間に広まってしまいます。そうすると、当然競合が増えます。競合が増えれば、お客様は取り合い。競合が増える前と後ではビジネス環境は大きく変わります。
だから、トップを走り続けるためには絶えず変化しなければならない、成長し続けなければならないのです。それを一瞬でも怠ると、彼のような完璧な会社でも赤字に転落するということ。ありふれた会社に成り下がってしまうということです。
あなたの会社は常に成長していますか?
10年ひと昔ではありません。今や5年ひと昔。時代遅れのやり方ではどれだけ努力しても勝てません。
大切なことは変わること。
変える勇気を持つことです。
そこのところくれぐれもお忘れなく。
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