新潟県三条市にタダフサという包丁メーカーがあります。昭和23年創業の老舗包丁メーカーですが、ご多聞にもれず海外の安い包丁に押されて業績は芳しくありませんでした。
そんなタダフサですが、今、大ヒットを飛ばしている包丁があります。それが、パン切り包丁。一本、10,260円もするパン切り包丁ですが全国から予約が殺到。今から注文しても入手できるのは来年の7月といいますからその人気は半端ではありません。
では、なぜこんなにも人気になったのでしょうか?
それは、単なるモノづくりをやめ、コトづくりに変えたからです。
コトづくりとは、単に優れた製品を作るだけでなく、コンセプトやストーリー、ユーザーエクスペリエンス(製品やサービスを利用を通じて得られる体験)などの高い付加価値が込められた製品を作ること。
タダフサのつくるパン切り包丁は、職人がつくるパンくずが出ないパン切り包丁がコンセプト。ただ単によく切れる包丁ではありません。サイトには以下のような言葉が並びます。
「波刃ではない、」パン切り庖丁です。パンの切り口がなめらかでパンくずがほとんど出ません。柔らかいパンはつぶさずにすんなり、皮が硬いパンも、先端部の波刃できっかけをつくることでスッと切れます。
刃が落ちる感じに切れ、思わず何枚も切りたくなる切れ味です!断面がボソボソとしないため、バターやジャムも塗りやすく、サンドイッチのパンの耳落としも手を添える程度で切り落とせます。とあります。まさにストーリー、ユーザーエクスピリエンス(製品やサービスを利用を通じて得られる体験)の感じられる商品です。
モノづくりが重要な時期は成長期です。成長期は、世の中がどんどん豊かになっていくため、より多く、もっと豊かにというニーズが溢れ、需要が拡大しています。一方で、供給は追いつきません。だから、必要なのは生産力と販売力の強化により需要を満たすこと。モノをつくることが重要なのです。
しかし、今、世の中は成熟期。より多く、もっと豊かにというニーズは一通り満たさ、供給力はむしろ需要を上回っています。必要なのは、新たなニーズを創り出しお客様が買う理由を創り出すことです。つまりコトづくりが重要なのです。だから、よく切れる包丁ではなく、職人がつくるパンくずが出ないパン切り包丁が売れるのです。
これはそのまま建売業界にも当てはまります。住むだけの家ならどこにでもあります。必要なのは、ストーリーのある家、ユーザーエクスピリエンス(製品やサービスを利用を通じて得られる体験)の感じられる家です。そこのところくれぐれもお間違えなく。
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