「見切り千両」ということばがあります。
株式などの相場で使われる言葉ですが、含み損を抱えた株などに対して損失を拡大させないためにある程度の損を覚悟で売買することは、万両の価値があるという格言です。
これは、建売業界でもよく用いられます。売れないと判断したらすぐに値下げして他の現場で挽回する。パワービルダーなどがよくやる方法で多くの中小建売業者もやっています。
果たしてこの方法は正しいのでしょうか?私は疑問に思います。
もちろんビジネスは生きものですから損切りしても換金しなければならない状況もあります。絶対に値下げしてはいけないと言っているのではありません。ただ、値下げは極力避けるべきだと思っています。
その理由は3つ。
まずは、利益の問題。
建売住宅が利益率が高かったのは昔の話。今は思うような利益が取れない時代です。半年、なかには1年がかりで手がけた現場が気がつけばほとんど利益がなかった・・・ではビジネスをしている意味がありません。しかし、安易な値下げを繰り返せばあっという間にそんな状況に陥ってしまうのです。
2番目は、信用の問題。
金融機関はもちろん購入者も仲介業者の信用も失います。お金を借りるために提出した事業計画と現実の売上げが違う訳ですからそんな状態が頻繁に起これば当然、金融機関の信用はなくなります。市況が悪化したときに真っ先に切られる会社になってしまうことでしょう。
また、多棟現場などで最初に購入したお客様と値下げ後の物件価格が余りにも違うとクレームになることもあります。仲介業者は、「今すぐ決めないと売れてしまいますよ・・・」「こんな価格では滅多にでませんよ・・・」などと甘い言葉をささやいて成約させるのが常。そんな言葉で契約させた物件があっという間に大幅値下げではバーゲンセールががあるのを知っていて定価で売る販売員のようなものです。購入者も仲介業者も決して気持ちいいはずはありません。
そして最後が、これが一番重要だと思うのですが、
値下げによって会社が安易な解決策を選ぶ体質になってしまうことです。
「売れないんだから値下げは仕方ない」
「この市況(景気)だから値下げは仕方ない」
「今どきのお客はやっぱり価格」
そんな言い訳を正当化する会社になってしまうことです。こうなってくると仕事に緊張感は生まれません。値下げという逃げ場があるわけですから誰も創意工夫をしなくなります。結果として、売るための努力をしなくなる。そして市況に左右される会社になってしまい競争力がなくなります。
大切なことは、「絶対に値下げしないで売り切る」と覚悟すること。
それさえできれば売るための解決策はおのずと見えてきます。さぁ、あなたも覚悟を決めましょう。そして、値下げしないで売れる会社に生まれ変わりましょう。それが中小建売業者の生き残る道です。
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